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マッチング事例

事例⑥

社内のコミュニケーション活性化と
人材育成で生き残る地方中小企業へ


[業種]製造業
株式会社信栄食品
(松本市)

受け入れ企業

株式会社信栄食品
代表取締役社長神倉 藤男さん

冷凍生餃子専業メーカー。お客様に合わせて高品質の餃子を提供するOEM事業で業容拡大。自社ブランドでは地域食材にこだわった餃子を展開している。信州伝統野菜の「松本一本ねぎ餃子」が好評。また、海外展開も行っている。

客員研究員

リサーチ・フェロー
佐竹 宏範さん

東京都出身。2007年ケンコーコム株式会社入社。主に物流領域を担当し、2013年オペレーション本部長に就任。物流関連部門をを統括し、子会社取締役を兼務。サプライチェーン最適化、事事業提携プロジェクト推進などを担う。東日本大震災後は妻の実家がある岩手県でプロボノ活動活動も展開。2016年株式会社おかんに転職。オフィスおかんサービスの責任者として、商品開発・調達・物達・CS・システムなどサービスの全領域を統括、構築。2018年株式会社セブン& アイ・ホールディングスにて新業態開発に従事。

ミッション

順調な売上上昇のなかでさらなる
成長に向けた体制・仕組みの構築、製造・営業・開発の連携強化からつながる成長エンジンの推進、従業員がいきいきと働ける環境整備、経営者が考える経営方針などの可視化と浸透

リサーチフェローの取り組み成果

社員インタビューを通じて、繁忙期で大変な状況のなか、ボタンの掛け違いなどから会社への信頼と意欲を失った社員の現状を把握。一方で社員は仕事への誇りももっており、さらに発揮できていない力が多くあることもわかりました。まずは社員が一丸となって取り組む組織と計画を作る必要があると感じ、「2019 年4 月1 日から週休2 日実現」を目標に掲げ、社長に現場を知ってもらい、社員とコミュニケーションを図ってもらうことで、社内に大きな変化が生まれました。

近い将来の未来ビジョン・展望

週休2日の実現と
働きやすい職場環境の構築製造・営業・開発の連携を円滑にすることでさらなる企業の成長へ
力が発揮できていない社員の活用と人材の育成
地方中小企業の生き残りをかけた独自の経営戦略

未来のシナリオ

変化の激しい時代に成果を求めて状況が硬直するよりも、温かい変化を歓迎していける組織にしていくことが大切だと以前から感じています。その「冷たい成果よりも、あたたかい変革」という切り口から、今回は今までの経験や知識も踏まえて社員インタビューや社長と現場のコミュニケーションの活性化など、いくつかの取り組みを試しました。その結果、社員が前向きになって全体に一体感が生まれ、少しずつ社内に変化が生じていることは大きな手応えです。
また、力があるのに活用されてない人材のトレーニングを積むことで、社員が力を発揮しいきいきと活気付いていける会社にできることは、今後の地方中小企業の活路だと考えています。

受け入れ企業の感想と期待

若手社員とのギャップを埋めるために会社の状況と熱意を伝えてマッチング

冷凍生餃子専業メーカーとして小ロットからOEM生産を行い、ご要望に応じた配合や指定原料で製造できることが当社の一番の強みです。今、餃子の売上は伸びており、昨年には松本市内に第 2 工場も構えました。とはいえ、業界への参入は熾烈で、人口減少や高齢化が進むなかで必然的に食べる量が減るという市場原理を考えると、今後は厳しい時代に入ると感じています。
 そうしたなか、当社は毎年数名の新入社員を採用し、現在は工場従事者の約半数の20名ほどが若手社員。従業員の平均年齢が若返った分、経営層とのジェネレーションギャップが生じ、その打開策を日々考えていたところ、適したプログラムがあると主要金融機関から紹介されたことで今回のプログラムを知りました。もともと信州大学とは工学部や農学部と共同で食品事業に取り組んできた経緯があり、今後もっと深い取り組みができればとすぐに快諾。何人かと面談し、最もフィットしたのが佐竹さんです。佐竹さんに会社の状況や抱えている案件、要望などを隠すことなくお話ししたところ、熱意が伝わった形でマッチングが成立しました。

個人面談を通じて感謝を伝え
要望を聞き取ったことで社内が前向きに

佐竹さんは年齢的にも従業員たちの兄貴分という存在で、従業員たちは一気に心を開き、今までの悩みや不満、会社に対する希望を正直に伝えているようでした。その内容を佐竹さんから聞くことで、私はギャップの解消を図りました。特に12月は繁忙期で毎年、従業員の不平・不満やストレスがたまる時期ですが、今までその恩返しができていなかったため、佐竹さんの助言から賞与を支給する際に手渡しし、日頃の感謝を伝えるとともに一人ひとりと話す個人面談の機会を設置。その際、佐竹さんが社内調整を進めてくれていたので、面談ではすぐに従業員の要望を聞くという本題に入ることができました。その面談を通じ、従業員たちが思っていた以上に会社を思ってくれていたことは嬉しく思いましたし、この従業員たちとなら会社を今以上によくしていけると実感しました。また、要望に対しては少なくとも改善の方向を向いて努力すると全従業員と約束をしました。おかげで社内は明らかに笑顔が増えましたし、現場からは率直な意見が上がってくるようになり、会社からの要望に対しても「こういう形なら応えられる」という前向きな発言ができるように変わってきています。その背景には、やはり会社や社長自体が変わってきたと従業員たちが感じてくれていることがあるように思います。この業界は人間も変わっていかないと生き残っていけないと改めて知りました。
 また、1月には10年ぶりに1 泊 2日の社員旅行を企画。今までは忘・新年会などの行事も参加できない従業員がいましたが、今回は全員が参加しました。佐竹さんの提案で旅行中には取引先スーパーで自分たちの商品がどう販売されているかを研修し、それによって仕事の誇りと責務、喜びが生まれたと感じています。

完全週休二日制の働き方改革をめざし経営者も従業員も努力と歩み寄りを

今は「4月から完全週休二日制を必ず実行させる」という目標を掲げ、毎朝、朝礼で読み上げています。私も追い詰められた状況ではありますが、社員にとっても品質と生産効率の向上で完全週休二日制に向かえるので、ここはお互いの努力の歩み寄りです。また、第 2 工場も社員の切望から約束して作ったもので、私は今まで口に出して実行しなかったことはないので、完全週休二日制導入は従業員にも取引先にも信用につながると思っています。

大切なのは経営者も考えを変えること代償を恐れない姿勢で未来の改善へ

4月以降は佐竹さんの希望を尊重しながら、東京からの出張として走り出したプログラムを支援していただき、現在、東京の大手食品メーカーと進めている製造特許に関する案件にも携わっていただきたいと期待しています。
 今回のプログラムを通じ、目標のためには経営者側も考え方を変える姿勢をもつことが一番重要だと感じました。経営者は今まで変わらなかった故に今の状態があると真摯に受け止め、マッチングに際しては洗いざらい会社の状況を伝えることも大切。財政的にも精神的にも傷つくこともありますが、私は会社をよくするためには代償を受ける覚悟はできていると佐竹さんに伝えていたおかげで、今の結果が得られていると感じています。

リサーチフェローの感想と期待

夢だった地方創生の仕事や研究職、 2 拠点居住やパラレルキャリアを実現

ケンコーコム株式会社というeコマースの会社で物流部門を担当し、子会社取締役も兼務しました。そうしたなかで、東日本大震災以来、妻の実家が岩手だったこともあり何か地方創生に向けた仕事をしたいとずっと考えるうちに、地方メーカーのお惣菜をオフィスで販売する株式会社おかんに出合い、スタートアップに向けて転職。その後、株式会社セブン&アイ・ホールディングスに転職し、新業態の開発や経営企画に従事しました。
 今回のプログラムは偶然メールマガジンで見つけ、地方創生に加えて、以前から漠然と興味があった研究職にも携われ、さらに興味があったパラレルキャリアや 2 拠点居住の夢も全てかなえられると思って応募しました。
 実は当初、冷凍餃子のOEMの会社と聞いた時はあまりピンと来なかったのですが、社長に話をうかがうと、チャレンジ精神に溢れていろいろな取り組みをされていることが面白いと感じました。さらに、私は今までメンバーが働きやすくやりがいのある環境を作って成果を出すことを模索し続けていたのですが、社長自身も同じ考えで、社員の働きやすさを一番に考えており、めざす方向性が同じであることにも魅力を感じました。加えて、信栄食品の社員は平均年齢が30歳前後と若く、もしかしたら面白いことができるとも感じましたし、社長は「地方中小企業はさまざまなことにチャレンジしていかないと生き残れない」と強調されていて、営業、開発、製造の3つの連携をスムーズにすることで今後の成長につなげたいとの課題も抱えていたため、さまざまな側面から私の経験が役立てそうだと感じてマッチングが成立しました。

社員のヒアリング調査から現状を把握し社長とのコミュニケーションを活性化

最初に取り組んだことが、繁忙期前に立て続けに退職者が続いたことによる社員一人ひとりのヒアリング調査です。そこで、会社への信頼が薄れて

いる現状や、休みが取りづらい労働状況を把握するとともに、社員たちからは私に対して「会社を変えてほしい」という期待も実感。そこで、社長に工場に入って現場を見ていただき、「2019年4月1日から週休 2日を実現します」と掲げ、一人ひとりと面談をしていただきました。つまり、社長と現場のコミュニケーション不足を解消したのです。これにより私も社長も社内が前向きに変化し、全体で協力して乗り越える雰囲気の高まりを実感しています。
 また、ヒアリングを通じて感じたのが、リーダーシップがある、ハブ機能を担える力があるなど、さまざまな能力があるのに活用されていないということ。今は何人かを見つけ、トレーニングもしています。この人材の活用は地方創生においてもポイントになり、今後の地方中小企業の活路はそこにあるのではないかと考えています。

暮らしやすい松本の2 拠点生活
週1 回のゼミでは視野を拡大

なお、現在は東京でも仕事をもち、2 拠点で生活していますが、刺激になって楽しいと思う反面、妻と半分離れて暮らすので時に寂しさも感じます(笑)。ただ、松本は独自の色があって面白く、コンパクトシティで暮らしやすく、毎朝、山のきれいさにも感動しています。また、現場で働いているとどうしても視野が狭まってしまうのですが、このプログラムは週 1 回大学で強制的に考える時間があり、テーマが「100年企業」なので、今の取り組みを抽象化したり整理する機会があることも事業を進めるうえで役立っています。

「冷たい成果よりも、あたたかい変革」知識や考えを整理し、今後の活用に

今後は今までの経験や知識を踏まえて考えを整理し、論文にまとめて発表したいと考えています。今回、私が考えたフレーズが「冷たい成果よりも、あたたかい変革」。これから変化の激しい時代において、成果を追い求めて辛い状態で硬直するよりも、温かく変化を歓迎していける組織のほうがよいと昔から考えており、その切り口から展開した今回の事業を報告する予定です。そして、4月以降も信栄食品に長い目で伴走しつつ、今回の経験を他社でも生かせたら。半年間の今回のプログラムは、基本所得を得ながら受入企業のお役にも立て、自分の棚卸やアップデートができる、人生の面白い一時期になったと感じています。

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信州100年企業創出プログラム事務局
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