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マッチング事例

事例⑧

技術力を得て新たなステージへ。
信州のものづくり企業の躍進


[業種]製造業
ゴトー電機株式会社
(伊那市)

受け入れ企業

ゴトー電機株式会社
専務後藤 陽太郎さん

1986年生まれ、伊那市出身。1年の米国留学を経ながら筑波大学を卒業後、鉄道会社での勤務を経て、30歳でゴトー電機株式会社に入社。母の後藤ひと美社長を支え、開発や事務を含めて、ゴトー電機と共に同社製品の営業販売拠点である名古屋市の「G-TOOL株式会社」の経営全般を担う。

客員研究員

リサーチ・フェロー
山崎 晃資さん

1987年に長野市に生まれる。長野工業高等専門学校卒業後、静岡大学大学院へ。修了後は東京にある大手の精密機器メーカーに約8年勤務し、顕微鏡の設計から製造までに携わった。2020年度第3期の信州100年企業創出プログラムに参加。業務委託契約でゴトー電機で開発を任されている。妻とふたりのこどもと、南箕輪村在住。

ミッション

新商品の企画開発。
経営分析や商品戦略を踏まえた、新製品の企画、設計、製造。

リサーチフェローの取り組み成果

昭和43年創業のゴトー電機では新しい商品の開発をどう進めていくかが課題でした。リサーチフェローには企業経営の現状や商品開発戦略の構想から、新商品の開発準備を行いました。
現場での企業分析や商品戦略の構想過程で、大学での様々な視点を取り入れました。既存の製品の課題を払拭する新製品開発に向けた土台を築き、プログラム修了後の成功へとつなげました。

修了時から現在までの取り組み

「ブラストライカー」の開発・製造に見事成功し、2023年6月販売にこぎつけました。公共の橋などの塗装の耐久性を保つために、鋼材面を適切な状態にする工具。製造しやすく捨てやすい、シンプルなデザインを追求し、割高な国内生産でも利益が出せるコストバランスを実現。発売直後から各取引先に大好評です。

未来へのシナリオ

ゴトー電機は本プログラムで理想的な人材に出会い、また大学との連携を通じ広い視野を得て、企業の課題分析や製品開発に取り組みました。そしてプログラム修了から数年を経て、新商品のローンチを実現しました。
今後はプログラムで得た経験を活かし、人材を大切にし、技術力を高めながら、海外へも市場を拡大する予定です。地方企業、工事現場における人材不足など、業界を取り巻く環境は厳しい状況です。その中においても、製品開発へ挑戦し、社会インフラの側面からサスティナブルな社会の実現へ貢献することが、ゴトー電機の目指す未来シナリオです。

老朽化する社会インフラと人材不足
課題解決の救世主に

このプログラムに参加した理由は?

2代目に当たる父が、錆や塗装などを剥離させてブラスト面を形成する工具の製造販売事業を立ち上げて30年ほど。何もしないとこの事業もただ萎んでいくだけなので、何か新しいことをしなければとはわかっていました。そこで機械の企画、設計から量産への調整まで一貫してコーディネートできる人材を求めていました。しかし田舎の零細企業で、高度な人材を採用することは難しい。
そんな局面で、かねてからスポンサーをさせていただき、お世話になっている松本山雅FCの茂原さんから、このプログラムをご紹介いただきました。何一つ妥協せず(ダメ元で)求める人材像をリクエストしたところ、茂原さんを通してその通りの人材(=山崎さん)のご紹介があり、参加を決めました。

プログラムの効果をどう感じますか?

我々の市場には、微細な砂粒や鉄粒を噴き付ける「ブラスト」という工法がスタンダードです。これは世界中で長年活用され続けている優れた工法でもある反面、コストの問題、産廃の大量発生、作業環境の厳しさなどの課題も指摘されています。山崎さんは、これら課題を解決できる技術革新を果たすべく、今までとは違った視点からの製品開発を研究発表としてまとめました。
しかし新しい製品を仕上げるには何年もかかります。6ヵ月間で学んだことが会社にフィードバックされてすぐに成果が出るものではありません。プログラムの期間中は、山崎さんがざっくりとしたアイデアを大学から持ち帰り、具体案は、設計する中で一緒に構想を練り上げていきました。

山崎さんが開発した新製品への反響は?

製造が追いつかないくらい、予想をはるかに上回るほど好調な出だしです。今後は、より細かく狭いところに対応できる工具開発や、機械の自動化に取り組んでいきます。今、工事現場は人手不足なのに、工事の件数はどんどん増えていくという状況です。省力化に取り組まなければ、社会インフラの持続性が保てなくなります。技術開発によって早くそこに貢献がしたいという思いを山崎さんと共有しています。
開発した自社製品をお客様に知っていただくと、「もっとこういうものはできないか」と更にリクエストをいただき、新しい仕事につながります。こうして、山崎さんの活躍の場は終わらないでしょう。

人材を受け入れるにあたって工夫したことは?

山崎さんの希望で、正社員ではなく業務委託契約を結びました。当時の我々の課題は開発にあったので、経営資源や意識をそこに集中させる必要がありました。開発の仕事は、エンジニアをずっと会社に縛り付けておく必要はないですし、正直、我々が求める成果をあげてくれさえすればいい。だから山崎さんが実力を発揮しやすくなることを第一に、小さな会社の利点である柔軟さを活かして、会社の雇用や勤務の在り方などを山崎さんの希望に沿う形に変えてしまいました。
今後も、開発力をどんどん高め、”100年続く会社”とするために、エンジニアだけでなく他の社員たちにも存分に力をふるってもらえる組織にしていきたい。今後我々が、優秀な人材を更に受け入れる段階にきた時には、今回の経験が役立つに違いありません。

今後、山崎さんにどういうことを期待しますか?

山崎さんのおかげで経営陣としてこれまで開発に取られていた時間を、他の仕事に割けるようになりました。開発業務を全て任せています。お客様が求めるものをしっかり返せる会社にするために、山崎さんの持つ技術と経験は会社にとって必須です。私の右腕として、マネジメントにも積極的に関わってほしいと期待しています。

100年先の仕事と人生を考える
社会貢献の視点でものづくりを

このプログラムに参加した理由は?

前職は大手の精密機械メーカーで、顕微鏡の設計をしていました。すでに企画された製品の設計から製造・生産に至るまでが私の担当でしたが、製品の企画やコンセプトなど、上流の部分まで携わることができませんでした。顕微鏡の開発プロセスは分業が基本でしたが、もっと小さな製品でいいから、自分自身で考案し設計して製品として送り出すまで、全部一人でやってみたいと強く思っていました。
プログラムの受け入れ企業は中小が多かったため、自分が作りたい製品を設計できる環境があるのではと期待して応募しました。プログラムの内容もさることながら、出身地の長野県で働けることも魅力でした。自然が多く、慣れ親しんだ長野県は、子育ての環境としても最適だと考えたのです。

プログラムの学びを現場にどう生かしていますか?

プログラムの期間中は、ゴトー電機が置かれている環境や、企業の強み弱み、顧客の要求などを徹底的に考えました。プログラム終了後に新製品の企画を本格的に進めたのですが、その際、プログラム中に考え・調査したことを根拠として、説得力のある提案をすることができました。
また、客員研究員の同期や、講師の方々と意見交換するなかで、ひとつの企業に勤めていただけでは得られない広い視点が得られました。こちらも現場で活躍する中で様々な場所で活きていると感じます。

業務委託契約という形で働くのはなぜですか?

プログラムの講義の中で、フリーランスで働く人の話を聞いて、こういう生き方もあるのだと、ライフスタイルを振り返るきっかけを得られました。自分のキャリアを考えたときに、1社だけにいると、視野も経験も人間関係も絞られてしまうのではないか。いろいろな会社に関わり多くの視点を持ちたいと考え、業務委託という形をと希望しました。
時間に縛られずに働くことで、子育てを両立した生活ができるようになりました。時間の自由が利くため、子供の送り迎えや炊事など家事の半分以上は私が担っています。なかば強引にプログラム参加を決めたので、妻に対しては子育てで報いるしかないですね(笑)。会社から私専用の仕事部屋をいただき、仕事場にもよく子供を連れてきているんですよ。

新製品の開発に取り組んだ感想は?

前職では機械設計のみが担当業務であったのに対して、今回は自身で企画した製品ですし、機械的な部分だけでなく、製品のロゴのデザインや見た目の細かい箇所なども、全て自身が主体になって進めることができました。製品への関わりが多い分、こなす仕事も増えてはいますが、大企業と違って関わる人数が少なく、調整に割く時間が少なく済んでいるため、開発のスピードはそんなに変わらないと実感しています。

今後どのようなキャリアを作っていきたいですか?

プログラムでは、100年続く企業を目標に、長期的な視点で物事を考える時間がありました。人生についても、100年生きるとしたらどう人生を組み立てるべきなのか、自分に合ったワークライフバランスを提案しています。長野県内には、私のようにフリーランスで会社の技術面を担う人材はまだあまりいない一方で、必要としている会社さんは多く居ると感じています。ですから、ゴトー電機との関わり方のように、技術全般に関して中小企業をお助けするような仕事を今後増やしてゆければよいと思っています。

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信州100年企業創出プログラム事務局
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